《教会を知る Vol,5》教会から飛び出す気になるもの

西洋を旅していると私たちは必ず教会に出会う。そしてその外周を何気なく歩きながら高々と聳える姿を見上げたところ、取ってつけたような気になる物体を見つけるのである。日本では到底出会うことのないその存在は気になってしようがない。ましてや初めて訪…

今、旅ができないからこそ

恥ずかしながら今になって初めて、私は歴史小説の偉大さに気がついた。 小説は昔から好きである。特にミステリーなんかは読み始めたらどうやって止めたらいいかわからず、他のことが手につかなくなり、気がつけば読み終わるまでそれしかできなくなる時もあっ…

ミノタウロスに想いを重ねる2021年

今更だが1月も終わってしまうので、今年の挨拶も込めて毎年作り続けている年賀状について書こうと思う。 干支の動物が登場することがただ一つだけ毎年のルールになっている。もちろん西洋好きとしては、中国古来の干支の生き物たちであろうが、そこに込める…

『モナリザ』がルーヴル美術館にある理由

前回せっかく重い腰を上げレオナルド・ダ・ヴィンチに触れたので、もう一つ、彼を通して書いてみたいことがある。世界でも一番と言ってもいい有名絵画の『モナリザ』。イタリアで生まれ、イタリアで育ち、フィレンツェ、ミラノ、ローマで活動したダ・ヴィン…

私の苦手な芸術家、レオルド・ダ・ヴィンチ

大学生の頃一番面白いと楽しみにしていた授業が布施英利先生の『解剖学』だった。そして最近布施先生の新書が出るということで、早速本屋さんで手に入れたのが『ダ・ヴィンチ、501年目の旅』である。 正直な話、私はレオルド・ダ・ヴィンチがあまり得意では…

《地図の旅:ROMA》オベリスク編 -Vol,2 始まりのオベリスク-

誰がローマに持ってき始めたのか。誰がローマに建て始めたのか。の、答えに一番ふさわしいのではと思うオベリスクがある。 それがポポロ門にある「①フラミニオ・オベリスク」である。 地図上部に位置し、ローマの入口とも言われる門のある場所 (Jens Junge…

《地図の旅:ROMA》オベリスク編 -Vol,1 オベリスクとはなんなのか-

当分の間旅に出ることは難しいだろう。少し前まではお金がスケージュールがと悩んでいたが、そんな悩みは贅沢すぎたのだ。コロナウィルスが世界中で流行する今、努力したところでどうやっても旅には出ることができない。 そこで、今できることを。将来訪れる…

ぽっかり空いた2週間

今日出発する予定だったイタリアへの旅が中止になった。 正確に言えばコロナウイルスの影響から、今起こっていること、これから起こるかもしれないことを考えて、いつかのまたの機会に延期をしようと自分で決断をしたのだが。その答えに至るまでなかなか諦め…

多すぎたヴェネツィアのゴンドラ

ヴェネツィアを好きになりすぎた理由の1つに、車がいないという感動の体験がある。そして改めて気がついたのだが、車が存在しない空間というのはその時が初体験であった。もちろん車もほとんど通ることのない静かな場所や、細すぎて侵入できないような歩道…

映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』-幸せを見つける天才-

この映画を見て、今まで私はずっと勘違いをしていたのだと気がついた。 本来ゴッホは最高に幸せな人だったのではないか。彼の制作が波に乗り100枚を超える油彩を生み出した最後の2年間は特にだ。少なくとも週に一度は、描きたくてどうしようもなくなるような…

展覧会『マルク・シャガール — 夢を綴る』-美術館の普通を見る-

とても良い展覧会を観た。と言いながら11月4日までで終了間近なのだから、オススメする者としては最悪であるが。。。日本の美術館でも扱うところの多いシャガールの絵画や版画や印刷物。今回観たのは、銀座のポーラミュージアムアネックスで行われている、ポ…

《教会を知る Vol,4》ラピスラズリの星空

教会の天井に輝く真っ青な星空を見た事はあるだろうか。見上げたその瞬間、その美しさに動けなくなるような、心洗われるあの感動は、時間が経っても色褪せず、目を瞑るだけでも蘇る。本当になんて美しいのだろう。。確かに真っ暗な中で見上げた夜空とそこに…

パリで行きたい凱旋門

パリに来て、『凱旋門へ!』というとシャルル・ド・ゴール広場のそれが真っ先に思い浮かぶのではないか。まさにパリのシンボルのような存在感で、まっすぐ伸びるシャンゼリゼ通りのその先に堂々と聳える凱旋門。巨大な門から放射状に伸びる何本もの通りや、…

映画『ディリリとパリの時間旅行』ー目も想いもパリに浸るー

休みの取れなかったこの夏に、『ディリリとパリの時間旅行』というタイトルの映画は私には十分すぎるほどに魅力的だった。特に以前『19世紀パリ時間旅行』という展示に行き逃し、泣く泣く図録だけを購入しひたすらに後悔した想いがあったらか、『パリの時間…

「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」

以前書いたコルビジェ について、また2月に始まる展覧会の時にまた書きたい。と締めていたので、改めて書いてみたいと思う。 現在上野にある西洋美術館で行われている「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」表題の通りピュリスムを軸に構成さ…

2019年4月15日にノートルダム大聖堂で

今朝は妹からの「ノートルダムが燃えている」という連絡で目を覚ました。最悪に衝撃的な事実に、悪夢が続いているだけであって欲しいと思った。ただそれはまぎれもなく本当の出来事だった。現地からあげられる映像や画像がより悲痛な想いを含んで、こんな遠…

ビショーネという宝探し

人が蛇のような生き物に今にも飲み込まれようとしているそんな瞬間を描いたマーク。言葉にするとなんだか恐ろしいが、きっと多くの人があの有名な車のメーカー『アルファロメオ』のエンブレムとして目にしたことがあるだろう。 このマーク、実はイタリア、ミ…

《教会を知る Vol,3》教会の管理人

教会を訪れるとその外壁にも内側の空間にも、見渡すほどに人の姿を掘ったり描いたりした図像に出くわす。それが誰なのかと一人一人理解していくのは到底難しい話であるが、その中でも1番にわかりやすいのはキリストと聖母マリアだと思う。大抵は中央に描かれ…

アトリエ・ブランクーシという作品

ブランクーシを初めて気に留めて観たのは大学に入ってすぐの時だった。大学内にある美術館の舞台裏、所蔵作品の中であまりににもシンプルな金色のつるんとした塊が光り輝いていた。なんでもないのに異様な存在感を放つこれはなんだろうとその時は心に引っか…

年の始まりに

毎年の年賀状には干支を入れるというのが自分のルールなのだが、今年はなかなかに悩んでしまった。中国から来ている干支の文化だが、特に中国本来の意味の中で表現しようということでもない。ただ何かしらの意味のある願いが込められたらと思って贈るように…

ピカソと悲しみのミノタウロス

ピカソは自らをミノタウロスとし描き、語ることがよくあった。幼少のバルセロナ時代に見ていた闘牛の生と死がせめぎ合う強烈な印象から始まり、ミノタウロス自体の神話とも繋がる、生涯切っても切り離せない彼の分身として。ピカソにとってそれはスペイン人…

平面と空間を行き来する -サヴォア邸の不思議-

パリに何度も行きたくなる理由の1つ、イル・ド・フランス。市内から少し出かけたあたり、パリの周りはまた見るべきものに囲まれている。その中に、車や電車で20分くらいのところ、ル・コルビュジエの名作サヴォア邸がある。日本でも上野にある西洋美術館本…

「駒井哲郎―煌めく紙上の宇宙」

日本での銅版画の位置付けは決して高いとは言えない。作品としての値段で言えば、複製が可能な版画はもちろん世界中で低くはなるが、日本でのその歴史は比べ物にならないほど近年に入ってから確立されてきた。と言いつつも、その後すぐにプリンティングの技…

《教会を知る Vol,2》 2種類のキリスト磔

美術館でも、本の中でもそうだが、キリストが十字架にはりつけられているにもかかわらず、目をバッチリと開いている姿に出会うと私は少し不気味に感じる。それが薄暗い教会の中であれば、出会った瞬間ギョッとしてつい目をそらしてしまうだろうと思う。それ…

偶然のお土産

旅の最中にある必然の出会いの中に、ふと、偶然の出会いが紛れ込むことがある。今年の春に起こったそれは、ヒエロニムス・ボスの祭壇画との対面であった。 ヴェネツィアのアカデミア美術館。そこにあったのが『聖女の殉教』という三連祭壇画である。 『聖女…

「アルヴァ・アアルト――もうひとつの自然」

『アルヴァ・アアルトーー もうひとつの自然』が現在、神奈川県立近代美術館葉山で行われている。 アルヴァ・アアルトはフィンランド出身の建築家であり、家具ブランド『アルテック』の設立者でもある。日本ではその椅子やシェルフ、花瓶などでよく知られて…

奇跡に出会う旅 -ヴェネツィアで-

人間、『奇跡』という言葉にはつい惹かれてしまうのではないかと思う。長く歴史に残るそれであれば、私にとっては更に魅力的に輝く。ヴェネツィアに向かう前、手にした本の中に書かれていたガラスの奇跡は、そんな私を簡単に魅了した。 ムラーノ島 ヴェネツ…

デンマーク発『HEY』期間限定ショップ

日本初の『HEY』のshopが10月から期間限定でオープンしている。 Rolf Hayが2002年に設立したデンマーク発のインテリアプロダクトブランドで、軽快でカラフルな色使いや、50〜60年代のデンマーク家具のデザインを取り入れながらも現代らしいデザインアイデア…

クリスマスとは何の日か

ハロウィンも終わると本格的にクリスマスの雰囲気で街中が彩られてきた。日本人は一年中何かしらのイベントを楽しみにする幸せ体質だと思うのだが、中でもクリスマスはより特別なものらしい。 クリスマスをなぜクリスチャンでもない日本人が祝うのか。という…

変わらないことへの憧れ

戦後初めてヨロッパ取材を実現した写真家、木村伊兵衛の写真展『パリ残像』になんとか駆け込みで行くことができた。 1954年から55年に撮られたそのパリは、まるでこの間のように今も見られる姿と変わらず映る。強いて言えば、ライカとカラーフィルムが作り出…