ぽっかり空いた2週間

今日出発する予定だったイタリアへの旅が中止になった。

正確に言えばコロナウイルスの影響から、今起こっていること、これから起こるかもしれないことを考えて、いつかのまたの機会に延期をしようと自分で決断をしたのだが。
その答えに至るまでなかなか諦めがつかず時間がかかってしまったし、いっそのこと日本からの入国を禁止と言ってくれた方が気持ちは楽だった。

本来であれば明日から目の前に広がるはずであったローマ、アッシジフィレンツェシエナの街々。
コロナウイルスという見えない恐怖と錯綜するニュースの中に儚く消えていってしまった。

コロナウイルスがヨーロッパに広がり始めた今、昔流行したペストのことが頭をよぎる。
あれほどの致死力はないにしても、カミューの書いた『ペスト』で語られるような、それと同じような混乱が現実に起こっているのだから。
目には見えないものへの恐怖。今の時代はそれに加え、ネットの中で渦巻く膨大すぎる本当なのかもわからない情報がペストの流行とも似た今の状況を作っているのだとも思う。


さて、このポッカリ空いてしまった2週間だが、一つやりたいことができた。
ボッカチオの書いた、ペストにもフィレンツェにも関係する物語『デカメロン』を読むことである。
その病魔の恐怖から逃れるためにフィレンツェのサンタ・マリア・ノッヴェッラ教会に集まった10人の若者が、街を抜け出し郊外に引きこもり、10日間で100の物語を創作して披露し合う話。

ウイルスが生み出した恐怖と不安を抱る今。
読んだ後にどんなことを思うのだろうか。
現実の渡欧は叶わなかったけれど、1300年のフィレンツェに旅する2週間になりそうだ。

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