多すぎたヴェネツィアのゴンドラ

ヴェネツィアを好きになりすぎた理由の1つに、車がいないという感動の体験がある。
そして改めて気がついたのだが、車が存在しない空間というのはその時が初体験であった。
もちろん車もほとんど通ることのない静かな場所や、細すぎて侵入できないような歩道にかこまれた場所というのはある。
でも今までに車という存在自体がありえない、ましてや自転車という概念すらないような街に来たことはあっただろうか。
何度思い返してみても初めての体験である。

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ただそんな優雅でのんびりとした空間にも交通問題に悩まされる時代もあった。
それは1500年代のヴェネツィア
街は自家用ゴンドラを所持する人々で溢れ、もっとも多い時で1万艘のゴンドラがヴェネツィアの運河を埋め尽くしていたらしい。
それも今の黒く細長いおきまりの形ではなく、競うように装飾を施した、大きさも形もバラバラのゴンドラたちがである。
今が400艘ほどと言われているのだから、約25倍。比較して想像したらそれは相当な交通渋滞であったことは間違いない。
逆にどうやって進んでいたのかが不思議なくらいである。

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それらの政策費用の無駄遣いも含め、もちろんこれは街の大きな問題となり、1562年には政府が法令を定め、今の黒一色で先の尖った古来のゴンドラのみをヴェネツィアのゴンドラとした。
現在はこの法令自体は無効となっているようだが、冷静に街の景観や住みやすさのことを考えれば、ゴンドラが黒であり、あの形であることは今後も変わることはないのであろう。

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今ではゴンドラのそのほとんどは、私たちのうような旅行者のための観光用として運用されている。
安らぎや美を求めヴェネツィアを訪れたものに至福の時間を演出してくれるひとつとして。 

実を言うと、こんなにもゴンドラ好きのように綴りながら、私はゴンドラに乗ったことがない 。理由は単純に少し高すぎる値段とTHE観光への躊躇から。
でもまた次の機会があるならば。
せっかく私たち観光客のために続けてくれているのだから、
この美しい伝統に乗って、過去の姿を想像するのも悪くないな。。と、今思い始めているところである。