今、旅ができないからこそ

恥ずかしながら今になって初めて、私は歴史小説の偉大さに気がついた。

小説は昔から好きである。特にミステリーなんかは読み始めたらどうやって止めたらいいかわからず、他のことが手につかなくなり、気がつけば読み終わるまでそれしかできなくなる時もあった。
ただここ最近は西洋のことを知りたい気持ちの方が強く、史実を読み、向き合うことの方が自分のためになるのではと思っていたのだ。

 

それが、違うのでは?と思うキッカケになったのが塩野七生さんの『ルネサンス』を手に取ってからである。

塩野さん自体がイタリアを中心とした史実を書く方なので、最近嵌りに嵌っているイタリアを知るには最高の参考書であった。難しいことは多く語らず、読みやすい文体が次々に次の本へと手を伸ばさせた。

その手の先に突如現れたのが『ルネサンス』であった。

ペラペラとめくり、小説か…と思いつつ、勉強と思わず気晴らしに読むか。と読み進めたのだが、途中から今までにない感覚にゾッとした。
まるで自分がそこにいて体験するかのように、そしてルネサンスの人々の友達であるかのように、映像的想像が止まらないのである。
明らかに今までの史実書とは違う、よりリアルなルネサンスが思い描けるようになったのだ。

この『ルネサンス』の物語の中では、主人公その人と発端となる事件は創造であり真実とは異なるのだが、それ以外のことは実際に存在した人々が登場し、実際にあった歴史が動いていく。
史実を得意とする塩野さんならではのリアルな情景表現も合わさり、その時代あったであろう風景はきっとそうであったのだろう姿で描き出されている。
(ここまで書くと何かの回者のようであるが…
本当にただただ私にとっては、新しい気づきであったので、許していただければ…)

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物語の始まりとなるヴェネチアの鐘楼の上から

また塩野さんのオンラインインタビュー記事もとても良かった。(文末にリンクを貼っておくので興味があれば是非!)
イタリアに旅行できない今、この本で旅行をしてほしい。そして来られるようになった時にはこの本を持ってイタリアに来て欲しい。と。
旅に出れず鬱々としていた気持ちがひっくり返るように、今をも楽しんでいる塩野さんの雰囲気はとても心地が良い。

もし今、旅行も行けないストレスを抱えていたり、イタリアへの憧れを抱いているのであれば、今この本を読むことを心からお勧めしたい。

絶対に素晴らしいイタリアルネサンスの景色が目の前に広がるはずだ。 


塩野七生オンラインインタビュー

小説 イタリア・ルネサンス1〈ヴェネツィア〉 (新潮文庫)

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