ロンドン地下鉄に見つける日本人デザイナー

私の好きな文字の中にロンドン地下鉄専用の"Johnston"という文字がある。

ただ自分好みのデザインということもあるが、ロンドンの街全体で愛され、長い間大切に使われている文字というのがロンドンを見渡すほどに伝わってくるところがいい。

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なかなかそんな文字はないのではないかと思う。
文字もファッションと同じで流行りがあるし、なくなっていくものも多い。リバイバルされて人気が再熱するものもあるが、やはり流行の流れは早い。
もちろん昔から変わらずデザイナーに愛されるものもあるが、デザインに関係のない市民の間でも高い知名度を誇るというのはすごいことである。

この"Johnston"はロンドンというデザインに長けた流行発信の場所にあるにもかかわらず、100年間も街にあり続けている。 

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実はこの文字を作る過程で日本人のデザイナーが大きく関わっている。
オリジナルはJohnston Underground( ジョンストンアンダーグラウンド )といって、1913年にEdward Johnston ( エドワード・ジョンストン ) により作られた。
その後時代も変わり看板だけでよかった文字が、時刻表やポスターなどの紙媒体への使用が必要となった時、日本人デザイナーである河野英一さんがリデザインを任されることになったのだ。1979年、NewJohnstonの誕生である。

日本人としてはロンドンに行ったら駅を見つけるごとにぜひ自慢したい。

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私たちも使用できるフォント Johnston ITC

そんな河野さんのデザインも2016年のJohnston 100周年記念とともに、リニューアルすることとなった。
デザインは時代により変化も必要で、今は紙媒体からデジタル媒体へとデザインのあるべき場所が移行しつつある。
そのためには太めの文体だったNewJohnstonを、よりいろんな太さでどこに表示しても読みやすいように変化させる必要があったのだ。

ただ大切なのは以前や歴史を受け継ぐこと。Johnstonはそこからブレない。
思いっきり新しいデザインや流行りのデザイナーのデザインに変えがちなこの時代に、媒体に合わせてより使いやすいように小さな変化だけをさせるリデザイン。
Johnstonの歴史や誇りを途切れず語り告げるように、ぱっと見では気がつかない変化を遂げ、長い時代を生き続けているのだ。本当に格好いい。

この文字は i や j などにわかりやすいダイヤ型の特徴がある。
日本でもたまにこの文字を見つけるが、それに気づいた時、ロンドンのちょっとアッシュな空気を思い起こさせるのも不思議な感覚で面白い。