アーモンドの花と桜 - ピエール・ボナール展を観て

現在、新国立美術館で開催されているピエール・ボナール展にボナール最晩年の作品、『花咲くアーモンドの木』が来日している。
ボナールといえば、“日本かぶれのナビ”とあだ名されるほどの日本好きである。
その彼が最後に描いたのが桜にそっくりな白い花が咲き誇るアーモンドの木。       
  
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ゴッホも同じだった。ゴッホも日本を追い求め、死の5ヶ月前にはアーモンドの木を描いている。弟に生まれた子供のために、狂気と平穏の間を行き来しながら描いたお祝いの絵。

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アーモンドの木は一年に一度、早咲きの白か遅咲きのピンクの花で満開なる。
桜より少し早い3月の頃に、春を呼ぶものとして親しまれて、1ヶ月ほど咲き続ける。

2つのアーモンドの木の絵画は、日本に憧れていた彼らが、画家である最後の時にも日本の景色を巡らしていたであろうことを少し嬉しく思わせる。
ただ彼らの死が迫っている予感と悲しみも漂わせる。アーモンドの花よりも儚い寿命の桜のように。

 この2人の作家は全く逆の人生だったと思う。
ゴッホの話は涙なしには聞けないが、ボナールの物語は幸せそのものである。
生前1枚しか絵が売れなかったゴッホに対して、ボナールはそこに困難を覚えたことはないし、共同制作に憧れるゴッホに対して、ナビ派と属されながらもボナールはどこか孤高を求める画家であった。
日本への愛がそんな二人を結びつけることは、日本人として本当に興味深い。

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ボナール作品を多く見られるオルセー美術館

ピエール・ボナールは私の一番好きな人である。
人の見る幸せとその場の空気を描く、尊敬すべき観察眼の持ち主。
人間への愛、自然への愛、生活への愛、描くことへの愛、彼の目と心はくすむことがない。ボナールのように生きていけたら、きっとどんな時間も愛で溢れるのだろう。
また近いうちにボナールについて書こうと思う。

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オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール

2018年9月26日(水)~ 12月17日(月)
国立新美術館 企画展示室 1E [東京・六本木]
〒106-8558 東京都港区六本木 7-22-2

bonnard2018.exhn.jp